From Japan With Love

数多くの賞を受賞している版画家の塩見奈々氏は、世界や芸術に内在するとされる左右、男女、東西といった二元性と、版画の持つ鏡面性を重ね合わせた作品に長年取り組んできました。塩見氏の作品は浮世絵のアイコンや日本の伝統文化を、巧みに、モダンに再解釈するものです。今回のプロジェクトでは、『見立て百景』の格子構造をもとにしたデザインや、『滝の音』の水と鯉をリピート柄に創り変えたデザインがあります。

塩見さんの作品が布地にプリントされるとどのような効果があると思いますか？

私の作品がファブリックに変化していく過程を見てとてもワクワクしました。特にリピートの感覚が気に入りました。どこまでも続くような小さなリピート柄、異なる配色により醸し出される異なる雰囲気の一つ一つを見てとても満足しました。完成したファブリックは美しく、どのような使われ方をするかは、私の想像を超えるものになると思います。

超ミニマリストで魅力的なNoritake氏のデザインは、携帯電話のケース、ソックス、野球帽、インターネットや印刷物の広告、ファッション誌など、街のいたるところで目にします。彼の作品を使ってリバティ・ファブリックスのデザイナーたちが創り上げたユニークな水玉のプリントには、一つ一つの円のカーブに張り付くように小さな人物が描かれ特徴のあるデザインになっています。

普段は白黒で作品を描かれていますが、今回のコラボレーションでご自身の作品をカラーで見られていかがですか?

今回のオファーをうけた時、少し考えを巡らせました。白黒をルールにしてもらうか、または、カラー表現をリバティに委ねてみるか。打ち合わせでリバティのファブリックを多く見せていただく中で、リバティのカラーリングセンスは素晴らしいと感じたので、白黒のルールは取り払い自由に着色をしてもらったわけです。

こういう提供方法は初めてでしたが、提供したイラストレーションをリズムよくレイアウトいただき、シックなカラーリングも期待通りで、新鮮で愛らしく満足しています。

寺本愛氏は作品を通して人間性を追い求め、全てのデザインに漫画や劇画のスタイルを踏襲した鋭く感情豊かな表現力に満ちています。リバティ・ファブリックスのために制作されたプリントには、日常の暮らしにあるものからとった奇妙な黄道十二宮星座のようなデザインが描かれ、彼女の宇宙的な要素に対する興味が見て取れます。

このモチーフの背景にあるストーリーを教えて下さい。

星座のように散りばめられているモチーフは元々それぞれ異なる目的で描いたもので、それらをリバティのデザインチームにお渡しして一枚のデザインに構成していただきました。人体や植物、道具など一見奇妙な組み合わせですが、それぞれが夜空で共鳴しあうことで、神秘的なストーリーが浮かび上がってくるように思います。

自分の知らない場所・時代の誰かの生活の一部に、このファブリックが馴染んでいくことを願っています。

東京を拠点にするデザイナーの大原大次郎氏はタイポグラフィをはじめグラフィック、キネティック・スカルプチャー、音声パフォーマンスから詩まで、幅広い手段で表現しています。彼のデザイン「Word Board」 は、異なるアルファベットやタイポグラフィには異なる主張があるという彼の信念を表現しています。この作品は木製のスケートボードに文字を彫刻することで「文字に乗る」ことを可能にしました。

様々な芸術的手段を使って表現していますが、その中で一番のお気に入りの手段はありますか?

さまざまな表現に敬意があります。手で考えること、足で探ること、頭よりもおなかに落ちるものを大切にしています。中でも「書くこと」と「話すこと」の間を漂うような表現として、キネティックなオブジェクトや動的なものごとに魅力を感じています。

日本とフィンランドの両国でテキスタイルを学んだテキスタイルデザイナーの氷室友里氏は、織物の技術を通して人とテキスタイルの関わりの中から生まれるユニークで予想外の成果を追い求めています。ジャカード織りを専門とする氷室氏は、生地の表面に浮かせた糸にハサミを入れることで思いがけない新しい色や形を創り出します。また以前にも「リバティ・チャンピオンズ」にてリバティ・ファブリックスとのコラボレーションデザインを手掛けています。

氷室さんの作品のひとつである「Sky」について教えてください。

「Sky」は白く覆われた雲をイメージした白い糸をハサミでカットすると、内側から青空があらわれるテキスタイルです。飛行機雲の形をつくったり、大きな入道雲のシルエットをつくったりして遊ぶことができます。小さい頃から空を見上げて雲の形を観察することが好きでした。何かのシルエットに見えたり、刻々と形が変わっていく様子だったり、私にとって雲は想像力を掻き立ててくれる大好きなモチーフです。

写真家の新倉哲也氏は写真の道に入る前に油絵を学んでいました。彼のスチール写真は、その対象がジュエリー、花々、生きたカブトムシやファッション記事であっても、深く記憶に刻まれるような絵画的資質を備えています。著名なフラワーアーティストの川口昌亮氏と行ったコラボレーションでは、植物が一風変わった美しく有機的なシーンに収められています。それらが今回のリバティ・ファブリックスとのコレボレーションのインスピレーションとして使われました。

新倉氏の写真の特徴はその有機的な動きですが、それをファブリックデザインの型にはまった形式に収めると、何か違いがでてきますか?

写真として切り取ったイメージが、パターンとして繰り返される感じは、初めて見ましたので新しい感覚です。残像のように繰り返し現れる花々のイメージが好きです。以前私たちの花の写真をドレスの生地にプリントして使っていただいたことがあるのですが、リバティ・ファブリックスのデザインはそれとはまた全く違った世界観のように感じます。

金谷裕子氏の作品は、爆発するような強烈なサイケデリックな色彩と綿密で整然とした幾何学模様を組み合わせたものです。高揚感のあるポップな彼女の作品は、ペインティング、コラージュ、インスタレーションやアニメーションなどの手法で制作され、その全ての表現にダイナミックで無限のムーブメントが備わっています。60年代の音楽からインスピレーションを受けた金谷氏は、アシメトリデザインの「She’s a MOYPUP」 や 「Magical MOYPUP」 を通じて時代を代表する歌の名前に彼女のお気に入りの造語がもつ躍動感を与えました。

1960年代のスタイルと音楽のどのようなところがお好きですか？

色鮮やかで快楽的なところや、有機的で自然やフォークロアと混じりあっているところが好きです。またウーマンリブや平和運動など様々なカウンターカルチャーのような解放感も好きです。音楽は、聴いていると頭の中に虹がかかるような色彩的なところが好きです。

FACE氏は手描きのイラストレーションを通して、大量生産がもたらす平坦化や均一化の影響に挑戦することを目指しています。彼はファッションブランドやミュージシャン、雑誌の出版社などと緊密に連携し、独特の世界観を発信できるスタイルで作品を制作しています。今回のリバティ・ファブリックスとのコレボレーションのために彼が制作したプリントは手の込んだ物語性のあるもので、異質でありながらも調和のある様々な要素を繋げます。顔を近くに寄せて見たくなるようなデザインです。

リバティ・ファブリックスのために制作したデザインのストーリーを教えてください。

ストーリーは特にないですが僕がいいと思った色々なものを混ぜ合わせているので、今までの僕が歩んできたアーティスト人生を作品で表現している感じです。ただそれは今回に限らず僕が生み出す全ての作品にも言えるかもしれません。