これまでにないかたちでアーカイブの世界を体験できる「I AM. WE ARE. LIBERTY.」。創業150年を記念して開催されたこの展覧会では、リバティの本質であるデザイン、自然、アートをたどる没入型の旅へと、皆さまを誘います。
一歩ずつ進むごとに、リバティの歴史に秘められた物語と秘密が姿を現し、受け継がれてきた精神と美意識が、今ふたたび鮮やかに息を吹き返します。プリント、パターン、そして文化との深い結びつき、リバティの揺るぎない歴史が、空間全体に美しく響きあいます。
この特別な体験を構成したのは、前衛芸術の専門家である著名なイタリア人美術史家、エスター・コーエン。リバティの150年にわたる先駆的デザインを、稀有な視点からご案内します。草花や動物たちが彩る象徴的なデザインの数々から、歴史ある館を舞台に物語を紡いできた人々まで、リバティの歩みを体感できる、時を超えた旅をお楽しみいただけます。
リバティのチューダー様式の本館にて展覧会の扉が開かれたいま、キュレーターであるエスターに、この特別なアーカイブ展に込めた想いを伺いました。
Chronicling 150 of design heritage in our Tudor home
── 展覧会はどのようにして始まったのでしょうか?その旅路の起点は?
そうですね、すべては数年前、リバティから「FUTURLIBERTY」コレクションとイタリア未来派の影響との間に関係があるかどうかを探ってほしい、という依頼を受けたのが始まりでした。数年後、再びお声がけいただき、今度はリバティの150周年に際して、私が何かお手伝いできないかという話になったのです。
出発点となったのはアーカイブでした。というのも、こうした資料の多くはあまり知られていないからです。私たちはアーカイブを調べ始め、そこにデザインスタジオの仕事のあり方に通じる一貫性があることに気づきました。スタジオはいつもアーカイブを参照し、そこにあるファブリックやデザイン、パターンを再構築していたのです。つまり、皆が歴史を見つめていたのです。
── 展覧会ではどのようなことが体験できるのでしょうか?
私たちが目指しているのは、リバティのDNAを示すことです。Dはデザイン、Nは自然(ネイチャー)、Aはアート。これらはすべて、リバティが独自の世界を築いてきた核となるテーマであり、同時に、世界に対して「異なる生き方」を示してきた中心的な要素でもあります。私たちのアーカイブをめぐる旅も、この3つの要素に分けて構成されています。
訪れた人々は、想像力に満ち、色彩にあふれ、パターンや美しいアイデアが詰まった魔法のような世界に足を踏み入れることになるでしょう。色の美しさ、多くのデザイナーたちが生み出してきた新しいパターンやイメージの多様さに、きっと魅了されるはずです。この展覧会では、過去から現在、そして未来へと続くそれぞれの瞬間を、一つのつながりの中で体験することができます。そのつながりこそが、デザインやアーカイブを通して表現されているのです。
想像力に満ち、色彩にあふれ、パターンが広がり、美しいアイデアで彩られた、まるで魔法のような世界へと、あなたは足を踏み入れるのです。
── アーカイブの中で発見したハイライトにはどんなものがありますか?
ひとつに絞るのは難しいです。どれも本当に素晴らしいからです。それぞれが制作された時代の象徴であり、その中にリバティという世界がまるごと詰まっていると感じます。
特に興味深かったのは、第二次世界大戦の時代のアイテムです。この時代の生地やデザイン、パターンは戦前とはまったく異なっていました。
花柄や抽象柄は残っていますが、とてもはっきりとしたモノクロが特徴です。これはカラー印刷が不足していたためで、その分、非常に強い印象を持っています。また、「プロパガンダ・デザイン」と呼ばれたものともつながっています。それは明確なプロパガンダではありませんが、連合国が戦争に勝つことやチャーチルが偉大な指導者であることなど、政治的なメッセージを表現していました。
Scenes from within the exhibition
── リバティの芸術的・文化的な影響力を、時代を経てどのように表現しますか?
リバティはいつの時代もそこにありました。とても多くの人の心の中に根付いたブランドです。各年代のデザインは、その時代を映し出し、表現しています。時代を通して、色彩や花柄・デザインの変化を通じて、気分やムードの変遷が見えてきます。
例えば、先ほども述べたように、戦争の時代はとても劇的でした。人々はプリントに明るい色をのせたいと思わなかったのです。色が不足していたこともありますが、表面に楽しいものを載せる気持ちにはなれなかったのでしょう。ある興味深いデザインも見つけました。たばこの吸い殻がモチーフになっているのです。そんな生地を売るなんて想像できますか?でも、それがあの時代でした。今では誰も買わないでしょうね、いや、私は買いますけど!でも多くはないと思います。
リバティはいつの時代も存在し続けてきました。
多くの人々の心に深く根付いたブランドです。
── 驚いたことや予想外だったことはありましたか?
アーカイブ資料のほとんどは私たちにとってまったく新しいものでした。だから、はい、すべてが驚きでした!
これは常に、知り、体験し、理解しようと努め、学んでいくプロセスです。
── 展覧会を見終えた人たちに、どんな気持ちになってほしいですか?
個人的には、来場者がこの魔法のような世界にすっかり魅了されることを願っていますし、そうなると私は思います。多くの人がこの世界にとても惹きつけられているようです。ですから、それが伝わるメッセージであってほしいと願っています。
今年5月9日から7月25日まで、リジェント・ストリートのリバティ旗艦店にて好評のうちに開催され、世界中から多くの訪問者を迎えた本展が大阪・関西万博の英国パビリオンへと移され、2025年8月30日から9月12日までの期間展示されます。
イベントに関する詳細は、英国パビリオンの公式サイトや公式Instagram @UKinJapan よりご確認ください。