スポット ライト... アイアンシ

1890年代から1910年代にかけ自然界の有機的なものに触発され誕生しました美術運動のアールヌーボー。芸術と工芸品の区別に反発した芸術家たちは、家具、ジュリー、陶器、ガラス、絵画、彫刻などのデザインを生み出します。リバティの店と密接な関係にあるアールヌーボーは、イタリアでは今でも「スティーレ・リバティ」と呼ばれています。「アイアンシ」は、繊細な花々とカールしたラインなどが特徴的な、アールヌーボーの典型的なデザイン例です。

1902年頃にフランス人アーティストのルネ・ボークレアにより壁紙の縁取りとして考案された「アイアンシ」は、1967年にリバティのために初めてプリントされ、アールヌーボー様式のリバイバルの一環として登場しました。エドワード朝時代から1980年代まで3世代にわたりリバティにデザインを販売してきた家族経営のテキスタイル会社、ハワード・スタジオにより「スウィンギング・ロンドン」市場向けにリメイクされました。60年代に再登場した「アイアンシ」はリバティのカーナビー・ストリートの顧客の間で瞬く間にヒット。元々は家具やドレス用生地に使われていましたが、スカーフに使われるようになりました。このデザインは1986年にタナローン・クラシックコレクションに加わりました。

柄名の由来となったと思われるスミレのように「アイアンシ」は新しい世代ごとに花を咲かせます。シルクパジャマ、コットンのベッドリネン、ファインジュエリー、レザーステーショナリーなどのデザインに使われてきましたが、最近になり現代的なデザイン「アイフィス」として生まれ変わりました。オウィディウスの「変身物語」に描かれたギリシャ神話の登場人物、アイアンシの恋人にちなんでこのデザインは「アイフィス」と名づけられました。今シーズンのコレクションではアイアンシを讃えたバッグや小物などがラインナップ。イタリアでプリントされたコートキャンバスにシックなツートンカラーでプリントされています。